排水トラップとは？主要5種類の構造・場所別水トラブルの対処法を解説

排水トラップとは、台所のシンクなどの水まわりの設備と排水管の間にある、水をためる部分のことです。さまざまな種類があり、設置される場所によってタイプが異なります。

排水トラップは普段目にしない部分の設備ですが、重要な役割をしています。どの場所にどのトラップが使用されているか、構造なども確認しておけば、突然のトラブルにも焦らず対応できます。特徴やトラブルについて解説します。

排水トラップの役割

排水トラップ内にある水がたまっている部分を封水といい、下水道からくる悪臭や害虫の侵入を防いでいます。また、下水道からの逆流も防止します。

サイフォン（サイホン）作用
サイフォン作用は「サイフォン原理」が基になっており、高い位置にある液体が一旦上に持ち上げられた後、より低い位置に流れ落ちる現象です。

管内が水で満たされていれば、管の途中で高い位置があってもポンプでくみ上げなくても水は流れます。サイフォン型トラップはこの作用で構成され、封水に一定の水がたまり続けます。

破封と取り付け方法
トラップ内に一度に大量の水が流れると強い圧力がかかり、封水が吸い出されます。この現象を破封と呼びます。また、排水が長い間行われていない期間が続くと、封水が蒸発し破封状態になります。

破封を放置すると悪臭の元となります。トラップが破損したときや臭いが取れない場合は排水トラップを交換する必要があります。

交換する際は、元の排水トラップと同じサイズのものが必要です。3mm程度のズレでも水漏れの原因になる可能性があります。購入する前に正確なサイズを測っておきましょう。

作業手順は古いトラップを外し、新しいものを取り付けるだけですが、工具を扱ったり、普段触らない場所の作業だったりするので、不安な方は業者に頼むと安心です。

設置する際の注意点は二重トラップといって、2つ以上のトラップを付けることは建築基準法でも禁止されています。この状態になると管内の空気が逃げられず、排水の流れが悪化します。

排水トラップの特徴

排水トラップの種類分けにはいくつかの方法がありますが、ここでは主要で代表的な５種類を紹介します。

S字トラップ
S字状に折れ曲がった構造をしています。設置しやすく場所を取りません。台所、洗面所、トイレ、浴室など多様に使われます。

P字トラップ
P字を右に倒したような形になっていて、封水の水位が上がると、上部横からつながる排水管へ水が流れます。

機能の安定性が高く、破封の影響が少ないのがメリットです。台所、洗面所、トイレ、浴室に広く使われます。

P字とS字のトラップ本体は同じもので、配管が異なります。床下の配水管へ、水が上から下へ流れるのがS字、横壁にある排水管へ、水は上から横へ流れるのがP字です。

Uトラップ
U字に折れ曲がった封水を持ち、排水口から水の流れは横向きのまま流れていきます。

他のトラップより汚れやすいため使われる場所は少ないです。野外の水道管との接続部や、やむを得ない場合に使用されます。

わん型トラップ
カップを被せた形状の水封で、台所や浴室で使用されます。

つまりやすく、特に毎日頻繁に利用する場所に設置されていて、汚れが多いものが流れてきます。トラップは取り外せるので、カップの掃除は簡単です。日々のお手入れや定期的な掃除できれいな状態を保つことが重要です。

ドラム型トラップ
水封はタンクになっているため、汚れやゴミが沈澱しやすいのがデメリットですが、破封しづらく、浴室に使われるケースが多いです。

排水トラップのトラブルと対処法

排水トラップに起こるトラブルは、悪臭、封水の減少、ゴミや汚れの蓄積です。特に、沈殿物はつまりの原因になります。こまめなお手入れで汚れの蓄積を防止するのが重要です。

取り外しが可能なものは、定期的な掃除や日々のこまめなお手入れを行いましょう。取り外しが難しいものは汚れがたまらない予防が重要です。

台所
台所のシンクに多く使用されるわん型トラップは、カップに水アカがつきやすく、徐々に汚れてきます。特に、食べ残しや油分が多いと汚れの進行が早まります。

掃除方法は、排水口の蓋とゴミ受けを外します。中のトラップは左に捻ると取り外せます。トラップ内部をスポンジと食器用洗剤で掃除します。

しつこい汚れには重曹とクエン酸を混ぜて振りかけ、ぬるま湯をかけることで汚れを落としやすくなります。

使われているのがP字やS字トラップの場合は、掃除する面積が狭く、パーツも少ないので、トラップ自体の掃除も簡単です。シンク下のスペースも広く取れます。

浴室
浴室の排水口ではドラム型トラップが多いです。ユニットバスは浴槽と洗い場にそれぞれ排水口があり、中でつながります。浴槽の排水口ではドラム型、洗い場で使われるのはボトルトラップです。

浴室で流される髪の毛や石鹸カス、皮脂は排水管がつまる原因です。放置すると脱衣所や洗面所が水浸しになる危険があり、定期的な掃除が必要です。

掃除は、排水口の蓋、ヘアキャッチャー、排水筒、排水ピースを取り出し、内部の汚れを落とします。髪の毛などのつまりがあれば取り出しておきます。

洗面台
洗面台には、S字・P字・Uトラップが使用されます。

洗面台の排水管は、別の排水立管とへつながります。この構造では「吸い込み作用」や「跳ね出し作用」が起こり、破封の原因になります。

サイフォン型の排水トラップは、ナットを外すだけでパイプが取り外せるので掃除も簡単にできます。まだ汚れが蓄積されていない場合は、ワイヤーブラシや液体パイプクリーナーでこまめに汚れを溶かすだけでも効果的です。

洋式トイレ
トイレで使用されるのは、S字、P字トラップです。トイレがつまると破封し、便器の水位が低くなります。水位が上がっていると水が流れていない可能性があります。

つまりの除去にはラバーカップ、真空クリーナーが有効です。日々の掃除には、重曹とクエン酸の泡で汚れを落とせます。他の方法としては、パイプクリーナーや、熱湯を一気に流す方法です。これらの方法はまだ汚れが酷くない場合であれば、きれいに洗い流せます。

つまりが解決できない場合、排水管が壁の中に埋め込まれているものでは対処が難しいです。自分で除去できないと感じたら無理に修理せず、業者に依頼するのが安心です。

排水トラップのお手入れ
排水管を洗う際は、ゴム手袋、掃除用の歯ブラシ、マスク、台所用洗剤、スポンジを準備しましょう。

よりきれいにするには、排水管にお湯を流す、排水管に重曹とお酢を流し浸透させる、パイプクリーナーを使う方法があります。どの方法も40〜50度のお湯を使うことで汚れが落ちやすくなります。

また、日頃からの汚れ予防として、極力汚れの原因になるものは流さないことも大きな効果があります。

食べカスや油汚れは台所ペーパーなどで拭き取ってから食器を洗う、浴室のヘアキャッチャーにゴミネットをするなどの対策が効果的です。重曹やパイプクリーナーを使用する場合も、汚れが軽度なうちからこまめにしておくときれいな状態を保てます。

つまりには、解決方法よりも予防する方が日々簡単にできるものです。毎日一手間かけるだけで汚れるスピードも劣化する早さもまったく異なります。

排水トラップの交換費用
排水トラップには現在明確な耐用年数はありませんが、一般的には10年前後と言われています。経年劣化は水漏れの原因にもなります。排水トラップの隙間から水漏れした場合は、ヒビが入っていたり腐食してサビができていたりする可能性があります。

交換を業者に依頼した場合、作業にかかる費用は6,000〜12,000円程度です。そこに、基本料金や出張費用、部品代など上乗せされ、総額は30,000〜40,000円ほどになります。排水口やトラップが特殊なものであれば、より高額になる可能性もあります。

自分で交換すればラップ本体と、パッキンの購入費のみで安く済みますが、経年劣化や内部の故障では、被害がトラップの交換だけで解決できないケースもあります。費用はかさみますが、業者に頼む方が確実です。

賃貸にお住まいの方は、経年劣化による故障であれば修理負担をしてもらえる可能性が高いです。管理会社や大家さんにまず連絡してください。

また、トラブルを早期発見するためには、お手入れの際にもトラップ部分のヒビやサビの有無も確認しておきましょう。

排水トラップは種類別に特徴を知っておこう

排水トラップは排水管の途中にある水をためる部分のことで、たまっている封水が下水道からくるガスや悪臭、害虫の侵入を防いでいます。

排水トラップの種類分けにはいくつかの方法がありますが、代表的なものはS字、P字、U、わん型、ドラム型です。どのタイプも日頃のお手入れや定期的な掃除がつまり予防に重要です。

トラップが故障すると水漏れが発生します。自分で修理することもできますが、他の被害もあれば修理は困難です。自信のない方や水漏れがひどい場合には業者に依頼するのが安心です。

緊急時にもすぐに対処できるように、場所別のトラップの把握と日々のお手入れで異常がないか確認しましょう。

監修者

主任

甲斐 祐耶

《略歴》

2019年から株式会社N-Visionにて水道メンテナンス業に従事。
社内研修をクリアした高い専門性を有し、水漏れやつまりなどの水道トラブルを累計1,000件以上解決してきたプロフェッショナル。
業界未経験から実績を積み上げ主任に昇格し、お客様からの評判もよく、社内での信頼も厚い。
宮崎県で水回りのトラブルにお困りまでしたら、みやざき水道職人にお任せください。